ARマニュアルとは:
Augmented Reality(拡張現実)技術を利用して、製品組立や操作方法 / 保守点検手順などの情報を提供するマニュアル
通常の紙のマニュアルやオンラインのPDFファイルとは異なり、ARマニュアルではスマートフォン、タブレット、ARグラスなどを介してARの技術を使用して情報を表示します。ARマニュアルは、実際の設備・機器に仮想的な情報・指示を ”重ねて表示” することで、作業手順を直観的でわかいやすい形でユーザーへ提供します。
その結果、現物合わせで情報を確認でき、マニュアルと機器の視点移動の伴う照らし合わせがなくなるため、ユーザーはより効率的に作業を進めることができます。
※そもそもARって何?という方はこちらをご覧ください。
ARマニュアルでは高度な最新技術を使うため、Wordやパワーポイントでの作成はできません。専門の受託開発ベンダーへのマニュアル開発依頼をすると、品質の高いマニュアルが作れる一方で時間を要したり、マニュアル内容変更の際に手軽に更新ができず、DX推進で重要なアジリティが下がってしまいます。
ARマニュアル作成ツールを使えば、ARマニュアル作成の内製化が可能です。以下は、ARマニュアル作成ツールの主な機能と、価値が近いツールとして動画マニュアル作成ツールとの違いを解説します。
ARマニュアル作成ツールの主な機能は、以下の通りです。
ARマニュアル作成ツールを使えば、ARマニュアル作成の内製化から運用までを一貫して行えます。
動画マニュアル作成ツールとは:
あらゆるマニュアルを動画化・運用するために、シンプルな動画編集機能やユーザーへの配信機能をもったツール
ARマニュアル作成ツールと同様に、動画編集のような専門知識が求められる作業の内製化を促進する事を価値としている事が多いです。国産ツールの例としDive、tebikiやTeachme bizが挙げられます。
ARマニュアル作成ツールが機器・設備の作業手順の直観理解、安全教育など一度の教育で印象付けをサポートする機能に特化しているのに対し、動画マニュアル作成ツールは幅広い業種・業務の作業手順マニュアルの置き換えや観覧環境に対応しています。
そのため、動画マニュアル作成ツールは以下のいずれかに該当する方におすすめです。
まずは自社でDXをすべき必要な作業を明確したうえで、ARマニュアル作成ツールと動画マニュアル作成ツールのどちらを導入するか検討するようにしましょう。
ARマニュアル作成ツールは複数あり、それぞれ特色もあるため、ツール選びに迷う方もいるはずです。以下では、おすすめのARマニュアル作成ツール5選の特長を解説します。
出典:エピソテック株式会社
DXの成功確率を高めるために重要な「現場巻き込み」「ボトムアップ」を実現するために、現場のユーザーが気軽に運用できる設計となっています。現場に行って、スマホだけでマニュアルを作成できます。技術的にもARの中でも最新技術であるVPS(ビジュアル・ポジショニング・システム)を活用する事により、機器だけでなく現場空間に対して広い範囲のARマニュアルが作成できます。
また、QRコード発行機能もあるので現場に設置されたQRコードを読み取ることですぐ当該のARマニュアルを起動できるので、観覧ユーザーは「とりあえずQRコードを読み取る」という簡単運用が可能となります。
また、動画マニュアルとしても利用できるのでARだけでなく動画マニュアルも取り入れたい方には相性抜群です。アップロードした後、AIが自動で動画内の人の動きと解説内容をもとに自動で分割作業するので、手軽に動画マニュアルを作成できます。
出典:Scope Technologies US Inc.(国内BP企業:株式会社NTTデータ)
リッチなARコンテンツがブラウザで作成できるツールです。企業が持つ機器3D CADデータの活用に注力しており、そのデータを使うことでアニメーションを使ったより直観的なARマニュアルを作成する事ができます。また、クイズもマニュアルに入れ込むことができるユニークな機能もあります。
作ったマニュアルは、モバイルデバイスだけでなくHoloLensにも対応しており、ハンズフリーソリューションとしても活躍できます。
出典:PTC(国内BP企業:SB C&S株式会社、サイバネットシステム株式会社、等)
ARエンジンやARのSDKを開発している企業が提供しているツールです。そのため、ARの認識能力と精度に強みを持ちます。Vuforiaはファミリー展開をしており、Work Instructions以外にも様々なAR現場支援ツールを提供しています。AR x エンタープライズのリーディングツール的な存在であり、国内でも数社の販売パートナー企業がいるのも魅力です。
作業記録などが自動で格納される仕組みがあるため、監査のためのエビデンス残しにも貢献します。
出典:Misterine s.r.o.(国内BP企業:AVR Japan株式会社)
見やすくデザインが整ったUI・公開チュートリアルも充実しており、ユーザーフレンドリーなツールです。作成だけでなく、コンテンツ管理画面も見やすいのが特徴。条件分岐などの難しい制御も、ノープログラミングで実行できるようになっています。
他のツールと違い空間/機器認識をしてARマニュアルを出すタイプで無く、目の前にARマニュアルを表示するようなアプローチ。機器の拡張ではなく、いつでもどこでもマニュアルを見れるような設計になっています。
東芝グループが開発した国産ツール。作成ツールのUIはとてもシンプルで、パワーポイントのスライドを作るような感覚でだれでもすぐARマニュアル作成の方法を習得できるような設計になっています。
また、システムインテグレーションサービスを依頼する事で、作成したマニュアルの可用性を高める事ができます。
数あるARマニュアル作成ツールの中から自社に最適なツールを選ぶためには、これから解説する3つのポイントを検討する必要があります。
まずは作成したARマニュアルをどのように運用すると現場の方が使用するかを考え、その運用方法から必要機能を考えます。
【例】
現場でのマニュアル検索の手間であった。でも、現場に直接アクセスできるQRコードが置けない。その場合、現場印字に対するOCRコンテンツ検索機能を備えたツールが有効。
優れたコンテンツ検索機能により、作成したARマニュアルが簡単に呼び出せられるようになると、現場への浸透がスムーズに推進されるでしょう。
マニュアル運用は一過性の取り組みでなく、事業存続のために必要な継続的な試みです。このようにこれまでの成功・失敗体験や現場の特性を踏まえたうえで、実施するARマニュアル運用方法を決めます。そうすると、必要となるARマニュアル作成ツールの機能も明らかになるのです。
ARマニュアル作成ツールは、各ツールで要求されるスキルセットが異なります。高度なことができるツールであれば様々なコンテンツを表現できますが、3DやARになれていないエンジニアが社内にいない場合は、内製化促進が鈍化してしまうためおすすめできません。
ツールによっては無料トライアルも用意されているので、実際に想定ユーザーにツールを触れてもらい、実際にARマニュアルが作成できるか所感を得て、導入を判断する事が大切です。
ARマニュアル作成ツールは、技術伝承のDXを支援する強力なツールです。しかし、どれほど優れたツールを導入しても、実際に効率よく運用する戦略が整っていなければ、成果にはつながりません。
以下では、ARマニュアルによるDXを成功させる3つのポイントを解説します。
ARマニュアルの目的は、技術伝承に必要な作業の手順を、ユーザーに直感的でわかりやすい形で提供し、技術伝承の促進を図ることです。しかし、ARマニュアル作成ツールのみならず、こういった新しい取り組みは現場から嫌がられ導入初期でつまずくという事がよくあります。
こういった事態を避けるために、ARマニュアルに興味がある方を見定め、その方を中心に徐々に現場へ浸透させていく事をおすすめします。
ARマニュアル作成ツールは、高度なコンテンツを簡単に作れるところにあります。成功体験を得たキーパーソンに対して、推進者やマネージャーがポジティブなコメントを提供したりすることで、現場がARマニュアル作成ツールが好きで手放したくない、という状況を作り上げていきましょう。
ARマニュアルを作成しても実際に現場で使われなければ、DXは進みません。現場ユーザーが必要な時に、すぐ必要なマニュアルが呼び出せるように推進者やマネージャが仕組みづくりをしておく事が重要です。
現場でのマニュアル検索をどうすれば短くできるかを考え、その方法を実施しましょう。例えば、各機器のマニュアルにアクセスできるURLをQRコード化して現場に貼っておいたり、またはそのURLを普段使うMS teamsやLINE WORKSのフォルダにリスト化しておく事等が考えれます。
ARマニュアル作成ツールの醍醐味は、現場ユーザーがすぐ更新できる点にあります。DXが必要とされる背景にもある市場の急速な変化に対応するために、作業も常に一定というわけにはいかないはずです。実際の作業とマニュアルの内容が乖離があると、現場から使われなくなってしまうため、常にARマニュアルはブラッシュアップする事を心掛けましょう。
組織として取り組むために、既存マニュアルに責任所在のある方にARマニュアルの管理についてのKPIを設定するのも良い施策と言えます。