アイトラッカーは人の眼球運動を計測できる専門装置ですが、これには大きく分けて据え置き型の「スクリーンベースアイトラッカー」と装着型の「ウェアラブルアイトラッカー」の2種類があります。
①スクリーンベースアイトラッカー
カメラ、センサーとディスプレイが一体になっているタイプのデバイスです。被験者がディスプレイの前に立つまたは座るだけで、高精度の視線計測を行うことができます。
装置を身に着ける必要がないため、被験者に身体的な負担をかけにくいのが特徴で、意思の疎通がしにくい小さな子どもや、高齢者を対象とした調査にも非常に適しています。
②ウェアラブルアイトラッカー
スマートグラスタイプや帽子、ヘルメットなどに装着するタイプのデバイスがあります。メガネや帽子と同じように装着できるため、被験者の自由な行動を妨げにくいのが特徴です。
屋外や建物内、運転中やスポーツなどさまざまな場所で利用でき、その際に人の視線がどう動いたかというデータをリアルタイムで取得することができます。
取り回しのきくウェアラブルアイトラッカーは、製造ライン内での目視検査や、設備の日常点検、バリ取りや研磨仕上げ等の手加工など、熟練者に属人化した作業の技術伝承に活用できます。
それぞれの比較を以下にまとめました。
スクリーンベースアイトラッカー | ウェアラブルアイトラッカー | |
設置方法 | ディスプレイに固定 | メガネやヘッドセット型で装着 |
使用環境 | 室内など固定環境向け | 屋内外どこでも使用可能 |
取り回し | 低(デバイスを移動できない) | 高(装着して移動可能) |
精度 | 高(視線データの安定性が高い) | 中(環境により精度変動あり) |
活用用途 | UX/UI/広告評価、学術研究 | 行動分析、技術伝承、医療研究 |
ユーザーの負担 | 低(デバイスを装着しないため) | 中〜高(装着による負担あり) |
データ収集の自由度 | 低(画面上に限定した視線計測) | 高(現実環境で自由に視線計測) |
用途次第で選定方法が変わりますが、大きく分けると、スクリーンベースは静的な環境での視線計測に、ウェアラブルは動的な環境での視線計測に適しています。
スマートグラスに関する技術をお探しの方は以下の記事も合わせてご覧ください↓↓↓
>>>>【2025年版】現場支援向けスマートグラス5選を徹底比較! <<<<
3.アイトラッキングを活用した技術伝承と応用
新人の加入や作業員の人事異動に伴って、技術伝承や教育が必須になるシーンは製造や医療、インフラ業界、に限らず、人の手を使って作業する現場では常に課題としてあげられます。
高い品質を保ちつつ、さらに生産性を向上させていくためには、迅速かつ正確な技術伝承や教育コンテンツの作成が不可欠です。
これらの課題を解決する技術として、アイトラッキングは以下の方法で活用することができます。
3-1.カン・コツの見える化
熟練者の技術を継承する際に最も重要な要素のひとつは、言葉では表現しにくい「カン・コツ」を可視化することです。
このカン・コツを、アイトラッキング技術を活用することで、熟練者が どこをどのように見ているのか を客観的に記録することができます。
例えば、熟練の溶接工が「適切な温度や圧力を感覚的に判断している」と言われても、それを言葉だけで説明するのは難しいでが、アイトラッキングを用いれば、作業中に どこに視線が集中しているか、どの順番で目を動かしているかがデータとして可視化されます。
この情報を分析することで、熟練者特有の視線の動きや注意点を理解し、技術習得の効率を大幅に向上させることができます。
3-2.インタビューによる言語化