動画マニュアルのツールは、いまやどれも「AI搭載」と書いてあります。ところが実際に触ってみると、AIがやってくれる範囲が製品ごとにまるで違うことに気づきます。字幕までなのか、手順の切り分けまでなのか。ここを取り違えると、導入したのに結局これまでと同じだけ手がかかります。
この記事では、動画マニュアル作成ツール6製品について、AIが実際にどこまで担うのかを各社の公式情報で確認して整理しました。とくに作成工数を左右する「手順の自動分割」は、対応の有無だけでなく何を根拠にどう分けているかまで見ています。
※自社の手順書様式にて、動画から手順書を作るツールを探されている場合は、こちらもご参照ください。
動画が「見られない」を解決!現場支援型の動画手順書システム「Dive」
AI導入は進んだが、「何ができるのか」が見えにくい
総務省の令和7年版「情報通信白書」※1によると、生成AIについて「積極的に活用する方針」「活用検討の段階にあり活用する方針」と答えた企業の割合は2024年度調査で49.7%。2023年度調査の42.7%から増えています。業務で使用していると答えた企業は日本で55.2%でした。
同時に、活用の課題として最も多く挙がったのが「実際的な活用方法がわからない」です。導入は進んでいるのに、何にどう効くのかが分からない。動画マニュアルのツール選びでも、まったく同じことが起きています。
「AI搭載」は、いまや差別化要素ではありません。そのAIが何をしているのかを見分けられるかどうかが、選定の質を決めます。
動画マニュアル作成でAIが担う5つの機能
製品に搭載されているAI機能は、大きく5つに分けられます。まずはどれがどの工程を担うのかを押さえておきましょう。
| 機能 |
何をするか |
効く工程 |
| AI手順分割 |
通し動画から手順の切れ目を検出し、ステップに分ける |
作成(最も工数がかかる工程) |
| AI字幕作成 |
動画内の音声を認識して字幕にする |
作成・閲覧(騒音下でも読める) |
| AIナレーション |
テキストを合成音声で読み上げる |
作成(吹き込み不要)・更新 |
| AI翻訳 |
字幕やテキストを多言語に自動翻訳する |
展開(外国人材・海外拠点) |
| AIタイトル・要約 |
内容からタイトルや要約を生成する |
運用(検索性・一覧性) |
このうち字幕・ナレーション・翻訳は、多くの製品が対応しています。音声認識も機械翻訳も成熟した技術なので、ここで大きな差はつきません。
差がつくのはAI手順分割です。そしてここが、作成工数を一番左右します。
なぜ「AI手順分割」だけ差がつくのか
手順書づくりで一番時間を食うのは、撮影でも文字起こしでもなく「どこで手順が切り替わるかを決める作業」です。1時間の作業動画を、意味のあるステップに切り分ける。ここを人がやると、動画を何度も見返すことになります。
難しいのは、映像の中に「区切り」が存在しないからです。パソコンの操作記録ならクリックや画面遷移というイベントが取れますが、現場で人が動いている映像は連続したピクセルの並びでしかありません。部品を取る、治具にセットする、締める、確認する——人間の目には別々の作業に見えても、データとしては切れ目がない。
これを自動で分けるには、映像そのものの意味を読み取る必要があります。手が何をつかんだか、道具が変わったか、作業者が移動したか。加えて、話している内容から「次に〜します」という言語的な切れ目も拾う。映像を理解するAI(VLLM)と音声認識を組み合わせて、ようやく成立する処理です。
だから確認すべきは「AI手順分割に対応していますか」ではなく、次の3つです。
- 何を根拠に分けているか — 音声だけを頼りにしているのか、映像の変化も見ているのか
- 音声のない動画でも分けられるか — 現場では騒音でナレーションを入れられないことが多い
- 分けた後に何が生成されるか — 区切るだけか、各ステップのタイトルや説明文まで作るか
AI機能で比べる動画マニュアル作成ツール6選
① Dive(ダイブ)

エピソテック株式会社が提供する、現場支援型の動画手順書システムです。「動画マニュアルを作ったのに現場で見られない」という課題から出発しているため、作成の自動化と、現場で引いて使える形への構造化がセットになっています。
AI手順分割: 通し動画をアップロードすると、作業動画を自動で手順に分ける特許技術と映像を理解するAIによってステップに分割されます。音声だけでなく映像の変化も見ているため、ナレーションのない現場動画でも分割できます。カメラで撮った実写でも、PC画面を録画した映像でも、同じ処理が走ります。
生成されるもの: 区切るだけでなく、各ステップに「作業内容」「コツ」「注意事項」「安全上の重要事項」が整理されます。動画を見ただけでは伝わらない判断基準が、文章として残る形です。
字幕・翻訳: 192言語の自動翻訳に対応。閲覧者が言語を選ぶだけで、文章・字幕・読み上げまで切り替わります。原文の併記もできます。
出力: Excel・Word・PowerPoint・PDF・MP4。さらに自社で使っている様式のファイルを登録しておくと、その体裁のまま書き出せます(Enterpriseプラン)。行を増減させない設計なので、数式・条件付き書式・印刷設定・マクロがずれません。文書番号や押印欄のある管理文書を、そのまま提出や保管に使えます。
料金: 無料プランは3アカウントまで。手順書数・ストレージは無制限で、有償プラン終了後も無料プランに移行してデータは残ります。
② Teachme Biz(ティーチミービズ)

株式会社スタディストが提供する、画像・動画をステップ形式で並べて手順書を作るプラットフォームです。飲食・小売・サービス業から製造業まで幅広い業種で導入されています。テンプレートに沿って配置していく方式なので、作成経験がなくても統一された体裁になります。
AI手順分割: 対応しています。2026年2月に動画AIの新機能が提供開始され、音声のない動画からでも、動きや変化といった描写情報をもとに手順を判別してシーン分割し、マニュアルのドラフトを生成すると発表されています※2。2026年5月には、動画・PDF・文章からのマニュアル自動生成、文章アシスト、字幕生成、AI検索、AI編集支援がAI機能として整理されました※2。
字幕・翻訳: 字幕生成に対応。自動翻訳は、公式の機能一覧で「100カ国以上の言語(26言語)に自動翻訳」と案内されています※3。
出力: 印刷用にレイアウトを整えたPDF形式で出力できます。動画単体はmp4でも出せます※3。
③ tebiki現場教育

Tebiki株式会社が提供する、現場教育に特化した動画マニュアルプラットフォームです。スマートフォンで撮影した動画をアップロードすれば、音声認識で字幕が生成されます。製造業・物流業での導入実績が多く、視聴履歴やスキル管理まで一体で運用できるのが強みです。
AI手順分割: 公式サイトには、動画をステップに自動分割する旨の記載は見当たりませんでした※4。AI編集としては字幕やスタンプの追加といった基本的な動画編集を自動で行うと説明されています。別途「AIコース作成サポート」があり、アップロードされた作業手順書(PDF)から構造とテキストを読み込み、コースとマニュアルの素案を自動作成します。既存の文書を起点にした自動化という点で、他社とは異なるアプローチです。
字幕・翻訳: 動画内の音声をAIが判定して自動で文字起こしし、テキストを100カ国以上の言語に自動翻訳します※4。テキスト読み上げにも対応しています。翻訳の言語数は今回調べた中で最多でした。
出力: 外部ファイルへの書き出しについては、公式サイトに記載が見当たりませんでした。製品内で閲覧する設計です。
④ VideoStep(ビデオステップ)

株式会社VideoStep(株式会社Jストリームのグループ会社)が提供する動画教育プラットフォームです。公式には「社内の文字や画像だけでは伝わらないノウハウやマニュアルを、音声AIを活用することでかんたんに動画にして蓄積できるクラウド型の動画教育プラットフォーム」と説明されています※5。製造現場の手順、システムの操作手順、営業ノウハウまで対象に挙げられています。
AI手順分割: 公式情報に記載は見当たりませんでした※5。
字幕・翻訳: 音声AIによる字幕の自動文字起こしと、機械翻訳による多言語化に対応しています。
出力: 外部ファイル出力についての記載は見当たりませんでした。動画を手順ごとに整理して製品内で見せる設計です。
⑤ Ollo Factory(オロ ファクトリー)

株式会社Ollo が提供する、製造業向けの作業分析AIです。手順書作成を単体の機能としてではなく、作業分析の一部として位置づけているのが特徴です。
AI手順分割: 対応しています。「膨大な工数がかかる手順書作成も作業動画をアップロードするだけで、AIが自動で動画付きマニュアルを作成します」と説明されています※6。
そのほか: 作業動画から正味作業とムダを分類する自動解析、ベテランと新人の作業比較、リアルタイムの異常検知といった、改善活動(IE)寄りの機能が揃っています。手順書を作ることより「作業を分析して改善する」ことが主目的の現場に向いています。
出力: 外部ファイル出力についての記載は見当たりませんでした。
⑥ AI Manual Coach(エーアイ マニュアル コーチ)

株式会社キャリアサバイバルが提供する、製造業向けのマニュアル自動生成サービスです。現場の帳票文化に寄せた設計が他社と違うところです。
AI手順分割: 対応しています。「作業動画をアップするだけでAIが工程を自動解析。テキスト・画像付き手順書から字幕付き動画マニュアルまで、人手を介さず自動生成します」と説明されています※7。
字幕・翻訳: 「英語・中国語・ベトナム語・タイ語など12言語に対応」※7。
そのほか: マニュアルの内容からAIが理解度テストを自動生成する機能、PDF・Word・Excelなどの社内資料を学習資料として登録して自社独自の専門用語を反映させる機能があります※7。
出力: PDFとExcel。「TPS(トヨタ生産方式)に準拠した標準作業組合せ票のExcel出力に対応。自社のExcelテンプレートに合わせた帳票出力も可能です(事前設定が必要です)」と記載されています※7。
AI機能と出力の対応まとめ
| ツール |
AIによる手順の自動分割 |
AI字幕・自動翻訳 |
主な出力 |
| Dive |
あり(特許技術)。音声なし動画も可。実写でも画面録画でも同じ処理 |
あり(192言語) |
Excel / Word / PowerPoint / PDF / MP4。自社の様式のまま書き出し |
| Teachme Biz※2 |
あり(2026年2月提供開始)。音声なし動画も可 |
あり(100カ国以上の言語(26言語)) |
PDF。動画単体はmp4も可 |
| tebiki現場教育※4 |
公式サイトに記載なし(既存のPDF手順書からコース素案を自動作成する機能はあり) |
あり(100カ国以上の言語) |
公式サイトに記載なし(製品内で閲覧する設計) |
| VideoStep※5 |
公式情報に記載なし |
あり(音声AIによる字幕・機械翻訳) |
公式情報に記載なし(製品内で閲覧する設計) |
| Ollo Factory※6 |
あり |
記載なし |
公式サイトに記載なし |
| AI Manual Coach※7 |
あり |
あり(12言語) |
PDF / Excel。自社のExcelテンプレートに合わせた帳票出力(事前設定が必要) |
各項目は、2026年8月時点で各社の公式サイト・公式発表に記載されている内容を整理したものです(脚注※2〜7)。「記載なし」は機能が存在しないことを意味するものではありません。導入検討時は各社に直接ご確認ください。
並べてみると、字幕と翻訳はほぼ横並びである一方、手順の自動分割は対応が分かれることが分かります。ここが作成工数に直結する部分なので、比較の重心を置くならこの列です。
もうひとつ、出力先も製品によって大きく違います。製品内で見る前提のもの、PDFまで出せるもの、自社の様式まで出せるもの。提出や保管が発生する現場では、ここが運用の可否を分けます。詳しくはマニュアル作成ツールの出力形式を比較で12製品を整理しています。
どう使い分けるか
| こういう状況なら |
見るべきポイント |
| とにかく作成の手間を減らしたい。撮った動画が溜まっている |
AI手順分割の有無。音声なし動画に対応しているかも確認する |
| 外国人材が多く、多言語展開が最優先 |
自動翻訳の言語数と、字幕・読み上げまで翻訳が及ぶか |
| すでに紙やExcelの手順書があり、それを活かしたい |
既存文書を読み込んで素案にできるか。出力を自社の様式に戻せるか |
| 提出・保管する書類の様式が決まっている |
出力先。PDFまでか、Word・Excelまでか、自社の様式まで出せるか |
| 作業のムダを見つけて改善したい |
手順書作成より作業分析の機能。IE寄りの製品が向く |
どれが優れているという話ではなく、自社でいちばん時間を取られている工程はどこかで決まります。作成が重いのか、展開が重いのか、書類化が重いのか。そこを先に決めてから製品を見ると、比較表の見るべき列が1つに絞れます。
Diveの場合
動画手順書システム「Dive」が置いている前提は、手順書は見られてはじめて意味があるということです。作成をいくら自動化しても、現場で開かれなければ結局は先輩に聞くことになります。
そのために、AIが担う範囲を「区切る」だけで終わらせていません。各ステップを「作業内容」「コツ」「注意事項」「安全上の重要事項」に整理するところまで自動で行い、現場が必要な手順だけを引いて読める形にしています。通し動画のままでは、見たい場面まで早送りする手間が残ってしまうためです。
加えて、実写の作業動画でもPC画面を録画した映像でも、同じ処理で手順に分割できます。ライン作業の手順書と基幹システムの操作手順を、製品を分けずに同じ場所で運用できます。
そして書き出し。自社で使っている様式のファイルを登録しておけば、その体裁のまま出力できます。現場は動画で見る、提出用の書類は今までの様式で出す——この2つを両立させるための機能です。今までのやり方を否定しないので、現場が身構えずに始められます。
まとめ
- 生成AIの活用方針を定めた企業は49.7%まで増えたが、最大の課題は「実際的な活用方法がわからない」※1
- 動画マニュアルのAI機能のうち、字幕・ナレーション・翻訳はほぼ横並び。差がつくのはAI手順分割
- 手順分割が難しいのは、映像の中に区切りが存在しないから。映像の意味を読むAIが要る
- 確認すべきは対応の有無ではなく、何を根拠に分けるか/音声なし動画でも分けられるか/分けた後に何が生成されるか
- 出力先も製品ごとに大きく違う。提出や保管がある現場では、ここが運用の可否を分ける
- 自社でいちばん時間を取られている工程を先に決めると、見るべき列が絞れる
動画が「見られない」を解決!現場支援型の動画手順書システム「Dive」
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よくある質問(FAQ)
「AI搭載」と書かれていれば、動画から手順書が自動でできるのですか
そうとは限りません。AIが担う範囲は製品によって異なり、字幕の自動生成や自動翻訳までで、手順への切り分けは利用者が手作業で行う設計のものもあります。作成工数に直結するのは手順の自動分割なので、この機能があるかを個別に確認することをおすすめします。
AIによる手順分割は、なぜ製品によって対応が分かれるのですか
映像の中に手順の区切りが存在しないためです。パソコンの操作記録であればクリックや画面遷移を区切りにできますが、現場を撮影した映像は連続した映像でしかありません。手の動きや道具の変化といった映像の意味を読み取る処理が必要になり、技術的な難易度が上がります。
ナレーションを入れずに撮った動画でも、AIで手順に分けられますか
製品によります。音声認識を主な手がかりにしている場合、無音の動画では分割が難しくなります。映像の変化も見て判断する仕組みであれば、音声がなくても分割できます。騒音のある現場では音声を入れられないことが多いため、事前に確認しておくと安心です。
AIで作った手順書を、社内の決まった様式で提出することはできますか
対応している製品とそうでない製品があります。PDFまでしか書き出せない製品、Word・Excelなどに書き出せる製品、あらかじめ登録した自社の様式の体裁のまま出力できる製品に分かれます。提出や保管が発生する現場では、導入前に出力先を確認しておくと、同じ内容を二重に作り直す事態を防げます。
参考文献
※1 総務省「令和7年版 情報通信白書」企業におけるAI利用の現状(2025年)
※2 株式会社スタディスト「Teachme Biz、動画AIの新機能をリリース。音声なし動画からでも、動画内の手順をAIが解析してマニュアル化」(2026年)/同社「Teachme Bizは、『AIマニュアル』へ。」(2026年5月21日)
※3 株式会社スタディスト「Teachme Biz 特徴・機能」/同社ヘルプセンター「PDFファイルとして出力する(Webブラウザ版)」・「アップロードした動画をダウンロードする(Webブラウザ版)」(2026年8月確認)
※4 tebiki現場教育 AI編集機能/動画マニュアル作成・管理機能(2026年8月確認)
※5 株式会社Jストリーム「働き方を変えるマニュアルDXシステム『VideoStep』、利用ユーザー数が30,000人を突破」(2024年)
※6 株式会社Ollo「Ollo Factory Tools」(2026年8月確認)
※7 株式会社キャリアサバイバル「AI Manual Coach」(2026年8月確認)