「現場のために動画マニュアルを整備したのに、結局みんな先輩に聞いている」——そんな手応えのなさを感じている製造業の方は少なくありません。当社が製造業の現場・管理層841名に行った調査では、動画を導入していても87%が「動画を見ても先輩・同僚に聞くことがある」と回答しました※1。本記事では、この「入れても使われ続けない」現象がなぜ起きるのかを原理から整理し、現場で本当に使われる状態に持っていくための分かれ目を解説します。
動画が「見られない」を解決!現場作業特化型の動画・AR手順書システム「Dive」
「動画マニュアルを入れたのに使われない」が起きる理由
製造業では、就業者数の減少と高齢化を背景に、熟練者が培った技能の継承や、現場を指導できる人材の確保・育成(OJT)が課題とされています。製造業で働く34歳以下は2002年の326万人から2023年は259万人へと約2割減少し、就業者数全体も縮小が続いています※2。この打ち手として作業手順の動画化が広がる一方で、「導入したが現場で十分に使われない」という声が後を絶ちません。
当社の調査でも、動画を導入・経験している層のうち75%が「期待ほど活用できていない」、63%が「使われ続けていない」と回答しました※1。問題は「動画を作ったかどうか」ではなく、作った後に現場で参照され続けるかどうかに移っています。なぜ動画が見られなくなるのかは 動画手順書とは?動画マニュアルとの決定的な違い でも整理しています。
原理:動画には「見て学ぶ」と「引いて使う」の2つの用途がある
同じ「作業手順の動画」でも、使われ方には明確に異なる2つの用途があります。
- 見て学ぶ(研修・事前教育):作業の前にまとまった通し動画を視聴し、全体像を頭に入れる使い方。
- 引いて使う(現場参照):作業の最中に「この手順だけ」を、その場で必要な箇所だけ呼び出す使い方。
一本の長い通し動画(いわゆる動画マニュアル)は、前者の「見て学ぶ」では機能します。しかし後者の「引いて使う」では、必要な手順を探して頭出しする手間が摩擦になります。人は作業の手を止めてまで長い動画を頭から探したくはありません。だからこそ「動画を見るより先輩に聞いたほうが早い」となり、せっかくの動画が使われ続けなくなる——これが構造的な原因です。用途が違えば、最適な形式も違うのです。
調査データ:841名が映す「導入後」のリアル
当社は2026年6月、製造業の現場・管理層を対象に、作業手順の動画活用に関する実態調査を実施しました(導入・経験層n=841、うち本調査n=500)※1。主な結果は次の通りです。
※本調査のプレスリリースは PR TIMES でも配信しています:プレスリリースを見る
- 導入率は36%:製造業の現場・管理層のうち、作業手順の動画を導入済み・経験ありは36%。過半はまだ導入に至っていません。
- 87%が「見ても結局聞く」:動画を整備しても、現場の質問行動は大きく変わっていません。
- 75%が「期待ほど活用できていない」/63%が「使われ続けていない」:導入後の定着が最大の壁です。
- 聞く側の80%が心理的負担:人に聞く・作業を止めることに負担を感じており、動画がその場で引けないと、結局この負担の大きい質問行動に戻ってしまいます。
- 使い場面は研修45%・現場参照46%:「見て学ぶ」と「引いて使う」がほぼ同規模で併存しています。
- 困りごとは分散:「探しにくい」30%、「コツが伝わらない」27%、「状況と合わない」28%、「長い」32%、「古い」31%と、いずれも3割前後で拮抗。単一の原因ではなく、複数の摩擦が同時に活用を妨げています。
注目すべきは、困りごとが一つに集中していない点です。動画そのものが無効なのではなく、「探せない・長い・コツが伝わらない」といった複数の小さな摩擦が積み重なって、現場参照のハードルを上げています。AIによる手順の自動分割や検索性の考え方は AIを活用した動画マニュアル作成ツールの比較 でも触れています。
調査結果(全設問の回答分布)
設問:「作業手順を教える/共有するために『動画』を作って使っていますか?」(製造業 現場・管理層 n=2,333)
設問:「その動画があっても、結局先輩・同僚に聞くことはありますか。」(導入・経験層 n=841)
設問:「動画を導入した結果を振り返って、最も近いものは。」(導入・経験層 n=841)
設問:「その動画は今どう使われていますか。」(導入・経験層 n=841)
設問:「実際には今、最もどの場面で使われていますか。」(本調査 n=500)
設問:「実感に当てはまるものをすべて」(複数回答・本調査 n=500)
設問:「その場で確認できず人に聞く/聞かれる状況に感じる心理的負担は?」(本調査 n=500)
設問:「『現場で引ける手順書』があれば、今の教え方・確認方法に対してどうしたいと思いますか。」(本調査 n=500・参考値)
現実解:「引いて使われる」状態をどう作るか
調査結果からは、現場で使われ続けるために押さえるべき観点が見えてきます。
- 手順ごとに分割して、必要箇所だけ引ける:通し動画ではなく、ステップ単位で頭出しできる形式にする。
- その場で開ける導線:QRコードやスマートフォンで、作業中にその場で参照できる。
- コツ・勘どころを言葉で添える:映像だけでは伝わりにくい暗黙知を、各手順に短く補う。
- 陳腐化させない更新性:内容が古くならないよう、撮り直し・差し替えが手軽にできる。
- 使われているかを可視化:閲覧状況を計測し、使われていない手順を改善し続ける。
つまり、「見て学ぶ動画マニュアル」と「必要箇所を引いて使う動画手順書」のどちらで整えるかは、用途に応じた設計判断になりつつあります。現場での自己解決を狙うなら、後者=引いて使える形式が要件になります。具体的な改善の進め方は 動画マニュアルが使われない原因と改善のコツ も参考になります。
Diveの場合
動画手順書システム「Dive」は、作業を撮影するだけで生成AIが映像を手順ステップに構造化し、現場で「引いて使える」手順書に変えるクラウドサービスです。手順ごとの分割、QRコードでの現場参照、コツの注記、自動多言語化に対応し、作って終わりにせず、活用レポートで閲覧状況とROIまで確認できます。製造現場の教育・技能継承・多能工化を、現場で実際に使われる形で支える設計です。
まとめ
- 製造業841名の調査では、動画を導入しても87%が「見ても結局聞く」、63%が「使われ続けていない」。
- 原因は動画の無効性ではなく、「探せない・長い・コツが伝わらない」といった複数の摩擦の積み重なり。
- 動画には「見て学ぶ(研修)」と「引いて使う(現場参照)」の2用途があり、最適な形式が異なる。
- 現場の自己解決を狙うなら、手順ごとに引ける動画手順書の形が分かれ目になる。
「撮るだけ」で現場に定着——動画手順書システム「Dive」
よくある質問(FAQ)
動画マニュアルと動画手順書の違いは何ですか?
動画マニュアルは一本の通し動画を「見て学ぶ」もの、動画手順書は手順ごとに必要箇所を「引いて使う」ものです。当社調査では、研修などで見て学ぶ利用が45%、作業中に引いて使う利用が46%と、用途が分かれていました※1。
動画手順書とは何ですか?
動画手順書とは、作業手順を手順(ステップ)単位に分割し、各ステップに短い動画とコツを添えて、必要な箇所だけをその場で参照できるようにした手順書です。通し動画と異なり「引いて使う」現場参照に向いています。
製造業で作業手順の動画はどれくらい普及していますか?
当社調査では、製造業の現場担当・管理者2,333名のうち36%が作業手順の動画を導入・経験していました。ただし導入していても、87%が「動画を見ても先輩・同僚に聞くことがある」と回答しています※1。
動画を導入しても現場で使われ続けないのはなぜですか?
困りごとが「探しにくい」「コツが伝わらない」「状況と合わない」「長い」「古い」と、いずれも3割前後に分散しているためです※1。単一の原因ではなく、複数の摩擦が同時に存在することが活用を妨げていると考えられます。
技能継承やOJTに動画は有効ですか?
「見て学ぶ」研修場面では有効で、当社調査でも研修利用が45%ありました※1。一方で「作業中に引いて使う」現場参照では、手順ごとに引ける形式でないと摩擦が残ります。用途に合わせて形式を選ぶことが重要です。
現場で動画を「引いて」使ってもらうにはどうすればよいですか?
手順ごとに分割して必要箇所だけ頭出しできること、QRコードやスマートフォンで作業中にその場で開けること、コツを言葉で添えること、内容を更新し続けられることが要件になります。
動画マニュアルの作成は手間がかかりませんか?
従来は手順の切り分けが最も手間でしたが、近年は生成AIが映像を手順ステップに自動分割できるようになっています。撮影した動画から構造化された手順書に変換することで、作成工数を抑えられます。
外国籍スタッフや海外拠点への多言語対応はできますか?
動画手順書システムの多くは自動翻訳に対応しており、同じ手順書を多言語で展開できます。外国籍スタッフの多い製造現場や海外拠点の教育標準化に活用できます。
動画手順書の導入効果はどう測ればよいですか?
閲覧数や手順ごとの参照状況を計測し、「使われていない手順」を特定して改善し続けることが有効です。教育時間の削減や質問対応の減少といった指標で、継続導入の判断材料にできます。
参考文献
※1 エピソテック株式会社「製造業における作業手順の動画活用に関する実態調査」(2026年・自社調査、導入・経験層n=841/本調査n=500)。本調査はセルフ型パネルを用いた自社調査であり、業界全体の代表値ではありません。
※2 経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2025年版ものづくり白書(概要)」(2025年、就業者数は総務省「労働力調査」による)