アイトラッキングによって得られた視線データをもとに、熟練者へインタビューを行い、視線の動きと判断基準を言語化します。
このプロセスを通じて、暗黙知(経験や感覚的な知識)を形式知(言語化された知識)へ変換し、技術継承のハードルを下げることができます。
例えば、手術を行うベテラン医師の視線データを分析しながら「この部分を長く見ているのはなぜか?」と質問することで、「この箇所の血流を確認している」「この角度で切開するとリスクが減る」といった、経験に基づいた判断基準を明確にすることができます。
こうしたインタビュー内容をマニュアルに組み込むことで、新人が学ぶ際に 「何を見て、どう判断すべきか」 をより具体的に理解できるようになります。
3-3.動画マニュアル化

アイトラッカーを用いて撮影した視線データとインタビューを組み合わせて、より視認性が高い、分かりやすい動画マニュアル を作成することができます。
アイトラッキング技術を用いた映像では、熟練者の視線の動きが手順ごとに表示されるため、動画を見て追体験することで「どこを見て、どう判断すべきか」 を直感的に学ぶことができ、新人者の成長をより促すことができます。
例えば、製造ラインでの組み立て作業を動画にする場合、熟練者の視線の軌跡を表示することで、「この部品の位置をまず確認する」「ここでミスが発生しやすいので注意する」といった情報を視覚的に伝えることができます。
3-4.オートメーション化

アイトラッキングを活用した技術継承の応用として、製造ラインや検査工程のオートメーション化(自動化)が挙げられます。
熟練者の視線データ分析し、作業プロセスを最適化することで、最終的には周辺機器のIoTやAIなどを活用して人の判断を必要としないオートメーション化を実現できます。
例として以下のような応用方法が考えられます。
①AIによる自動検査システム
熟練者の視線データをもとに、どこに重点的に注意を払っているかを学習し、不良品を自動で検出し選別するシステムの構築。
②ロボットの精密制御
熟練者の作業を視線データとともに記録し、ロボットに学習させることで、より繊細な作業のオートメーション化を実現。
③製造工程の最適化
アイトラッキングとAIを活用し、作業者の判断をデータ化・分析することで、高品質を保ちつつ効率の良い製造工程を自動で最適化。
このように、アイトラッキングを活用することで、単なる技術伝承にとどまらず、作業プロセスの最適化や、最終的な自動化へと発展させることが可能になります。